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2020/11/27

VIVIANOオリジナル生地制作を追うVol.1

2021AWコレクションに向けてVIVIANO×KIRYU textileの新たなコラボプロジェクトが始動し、10月、VIVIANOは生地選びのために桐生の3つの機屋を訪問。「毎シーズン柄モノがあって、これまで連続2シーズンは比較的はっきりとした柄を使ったので、次のAWでは少しぼんやりした陰影のような雰囲気がある柄を使いたいと思ってるんです」と語るVIVIANOが最初に訪れたのは桐生整染商事でした。

桐生整染商事の阿部哲也さんと
桐生整染商事の阿部哲也さんと

「桐生といえばカットジャガードですから、ドビー織り中心のうちはこのプロジェクトとは関係ないと思っていました」と迎えてくれたのは専務の阿部哲也さん。が、VIVIANOはHPでサンプル生地を見て、ここには必ず訪れたいと思っていたそう。

最初に手に取ったのは、VIVIANOがずっと使いたいと思っていた不思議な光沢のある生地。それは釣り糸を使った珍しい生地でした。

釣り糸を使ったという緩やかな光沢を持つ生地
釣り糸を使ったという緩やかな光沢を持つ生地

他にも、オリジナルの転写シートを経糸に転写して織ることで絣っぽい風合いを出した生地。桐生の紋紙屋の手による、スケッチをそのままデザインに落とし込んだ油絵のようなユニークな風合いを持つ生地。カバン地などによく使われるゴブラン織りなど、VIVIANOにとっては「どれも全部使いたい!」と思うものがいろいろ。

絣っぽい生地やゴブラン織りなど
絣っぽい生地やゴブラン織りなど

シンプルなストライプやチェックのドビー織りが得意な桐生整染ならではの生地を見つけると「ちょうどチェックとかボーダーが欲しいと思ってたんですよ!」と目を輝かせていました。

VIVIANOの目に止まった懐古調のチェック柄
VIVIANOの目に止まった懐古調のチェック柄

次に訪れたのは、2021SSでもコラボした津久弘織物工場。多様で鮮やかなカットジャガードが目に飛び込んできます。

津久弘織物工場の津久井啓介さんと
津久弘織物工場の津久井啓介さんと

それらを手に取りながら、「ぼやけた印象に見せるために、カットジャガードをカットしないで使うのはどうかなあ」とVIVIANOが提案。「引っ掛かりなどの問題はあるものの、カットしない分の加工代を節約できるためコスト的に安くなるという利点はありますね」と代表の津久井啓介さん。

津久弘の鮮やかなカットジャガード
津久弘の鮮やかなカットジャガード

「カットしないジャガードの上にオーガンジーを被せれば引っかかりの問題は解消するので、その生地でコートをつくるとか、服を未完成のまま出すっていうのもあっていいんじゃないかな。あるいはカットジャガードの生地が納品されてから自分で切るのでもいいかもしれないね」と、新たな創作の方向性も見えてきたようです。

独特なカットが施されたジャガード
独特なカットが施されたジャガード

最後は2020AWでもコラボしたミタショー。専務の三田咏司さんは昨年の上海ファッションウィークにも一緒に行き、VIVIANOとは既に気心が知れた仲です。

ミタショーのショールーム
ミタショーのショールーム

ミタショーはウール織物のクオリティとセンスにも定評があり、早速生地を手に取りながら「ウールで凹凸とか出せますか?」「千鳥格子からストライプになって、さらにチェックになるとか、一つの生地でパターンが変わっていくのとかも出来ますか?」など、VIVIAOは様々な質問を投げかけていきます。

ミタショーの三田咏司さんと
ミタショーの三田咏司さんと

「ウールの風通織りを使えば大抵のことができますよ。とりあえずイメージに合う生地があるか見てみましょう」と三田さん。二人で生地を手に取りながら、新たなテキスタイルの可能性について話を進めます。

様々な技術が使われたウール素材
様々な技術が使われたウール素材

「今、デザイナーが桐生まで足を運んでくれることはほとんどありません。若いデザイナーに来てもらって、どんなことを考えて、どんなものを欲しがってるのかを知るのは機屋にとってもメリット。それに合わせて生地の開発をするなど、相互に成長できる関係性を築いていけたらいいですね」と三田さん。

桐生を訪れるのは今回で三回目のVIVIANOも、「毎回新しい発見があって、刺激がもらえるしイマジネーションも膨らむ。デザイナーはもっと産地に来て、自分の目で生地をちゃんと見た方がいい。デザイナーでも生地のことをわかってない人はいっぱいいるからね」と、デザイナーと機屋が直接コミュニケーションすることの意義を語ってくれました。

2021AWにどんなウール生地が登場するでしょう?
2021AWにどんなウール生地が登場するでしょう?

その一方で、桐生の織物を使う際のコストが大きな課題だとも言います。「ひと昔前は日本ブランドのものは高くても売れたけど、今は中国のブランドのクオリティが上がって縫製の質もほとんど変わらなくなったから、中国のブランドの方にどんどん流れて行ってる。だから日本のものは前みたいに高くは売れないんです」

両者が作りたいものとコストの関係を、今後どうやって解消していくのでしょうか?次回はVIVIANOが選んだ生地のサンプルづくりの過程をお届けします。

VIVIANO SUE

中国出身アメリカ育ち。2008年から東京在住。文化服装学院卒業後に自身のブランドを設立。ブライダルとクチュールの仕事から始まり、今はプレタポルテもデザイン。アメリカ、中国、日本での暮らしの経験から東洋と西洋の様々なカルチャーが創作の源となっている。国内外のショーに出展。Vogue、Superior Magazine、GlamourUK、L’Officielなどのメディアでも数多く紹介されている。

●KIRYU textileは意欲的なデザイナーを募集中です。

ヴィヴィアノ・スーとのコボレーションが各所で反響を呼んでいるKIRYU textileは、新たなコラボレーションを展開すべく、若いデザイナーを募集しています。桐生の生地を使って誰も見たことのないようなファッションをつくりたいという意欲的なデザイナーの方、是非一度、当HPの問い合わせ先までご連絡ください。それぞれに個性を持つ機屋がお待ちしています!