IHNNのデザインでKIRYU Textileがロンドンへ
津久弘織物の生地によるワンピースとスカート。
東京を拠点に活躍する韓国人デザイナー、イン・チソンさんのブランドIHNNが、小林当織物、桐生整染商事、津久弘織物の生地を使ったアイテムをロンドンファッションウィーク2021AWで発表。デザイナーとの直接コラボプロジェクトに、また新しいページが加わりました。
多彩なカラーと実験的でユニークな素材の組み合わせによるイマジネイティブなコレクションで注目されているIHNN。2021AWコレクションは画家のマーク・ロスコの作品にインスピレーションを得ている、とインさん。
「最初に“崇高“という言葉がテーマにあって、いろいろ調べていくうちにロスコの作品に行き当たりました。僕の服は色彩を特徴としていて、今回はロスコの作品にあるような抽象的で神秘的な色彩を使って“崇高“というイメージを表現したいと思ったんです。また、今はコロナで医療関係の方々が大きな犠牲を強いられています。そういう崇高な行動をしている人たちへの思いも、このテーマには込められています」
そんな考えをベースとしたコレクションを創作する中で、彼は母校の文化服装学院を通じて、昨年の秋に初めて桐生を訪れました。
「以前は桐生織物というと伝統的な和服というイメージしかなかったんですが、実際に行ってみたら生地の豊富さに驚きました。特に小林当さんの生地のアーカイヴがすごくて、見たことのないような生地をいっぱい見せてもらいました。ジャガードについて、これまでよく知らなかったし使ったこともなかったけど、昔の古いジャガードとか、逆に今使ったらすごく面白いんじゃないかと思いました」
小林当では、太さの違う糸を織ることができる希少な特注の織機も見学。アーカイヴで見て気に入ったモールジャガードの見本をもとに、24cmピッチの蔦をモチーフにした柄で、3色のモール糸を使用した完全オリジナルカラーの生地をオーダー。
「3色の太めのモール糸で、織る際にレピア織機を太糸専用のものに交換し、柄癖が出ないように(柄のバランスが悪くならないように)注意しました」と小林当営業の大橋さん。“クラシックな感じが逆に新しい”というイメージ通りの生地になったとインさんは言います。
桐生整染で選んだのは、コーティングされたように見える生地。「釣り糸を使用した無地の生地で、太番手の綿を裏に貼り付けた組織なので厚地になっています。彼は中肉、厚地、素材違い、加工違いの見本をいろいろ持ち帰って、最終的に厚地を選び、希望の色にてオーダーを受けました」と桐生整染の阿部さん。こちらはフード付きのアウターになりました。
そして多彩なカットジャガードで知られる津久弘織物では、意外なことにジャガードでない生地を彼は選びました。素材はナイロン+レーヨンの無地。色はオレンジと生成り。細かいシャーリングが入っている生地です。「今は津久弘さんはこういう生地をほとんどつくってないらしくて、逆にそれが面白いと思いました」とインさん。最初は先染めで進行し、何度かやり直し、最終的には後染めで仕上げたという話からは、彼の色へのこだわりがうかがえます。
「スケジュールがタイトな中で、皆さんすごく優しくて、直接のやり取りは思った以上にスムーズでした。問屋さんとか間に誰も通さないことでコストを抑えられるのもいいところだと思います。桐生にはジャガードに限らず、他にはない生地、他にはない技術もあって、新しいことができそうな可能性をすごく感じました」とインさん。IHNNの独特な世界観とKIRYU textileが起こす化学変化に今後も期待!
CHISUNG IHN 印致聖
韓国ソウル出身。文化服装学院で2年間、文化ファッション大学院大学で2年間、服作りを学び、大学院の卒業コレクションをロンドンで発表。2015年に東京を拠点にブランドIHNNを設立。ロンドン、ソウル、東京などのファッションウィークに参加。2016年「Tokyo新人デザイナーファッション大賞プロ部門」、2019年「TOKYO FASHION AWARD」などを受賞。
http://www.ihnn-design.com/
●KIRYU textileは意欲的なデザイナーを募集中です。
若手デザイナーとのコボレーションが各所で反響を呼んでいるKIRYU textileは、新たなコラボレーションを展開すべく、常にデザイナーを募集しています。桐生の生地を使って誰も見たことのないようなファッションをつくりたいという意欲的なデザイナーの方、是非一度、当HPの問い合わせ先までご連絡ください。それぞれに個性を持つ機屋がお待ちしています!